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セ ラミドの 話

花王株式会社 研究開発部門 研究主幹 医学博士

芋川 玄爾

セラミド の 種 類 と 化 学 構 造

セラミド の 機 能

 セラ ミ ドは角層の角質細胞間に存在す る脂質、 細胞間脂質の主要成分のスフ ィ ンゴ脂質で約 5 0%を占めており 、細胞間脂質の他の成分は コレステロールエステル1 5%、 コレステロール 5%、脂肪酸2 0%からなっています。 ヒ ト角質 層に存 在するセラミ ドの 種 類と化 学 構 造に 関しては We r t z らが最 初に 報 告し、最 近 は 図1 のように、前の報告に比べ、 セラミ ド4が 新しいアシルセラミ ドとして 加わり、セラミ ド の 種 類 が6種 類から 7種 類に増えています。

角層水分保持機能  皮膚表面をアセ トン/エーテルで時間を変え て処 理し、 角層から セラミ ドを溶出させ、 その後 の皮表水分量をイ ンピーダンスメーターで測定 した結果、 溶出セラ ミ ド量に比例して水分含量 が低下しさらに皮膚表面の乾燥落屑性変化が 生じ、 逆に溶出したセラミ ドを再塗付すること により 、 この水分量が正常レベルまで回復し、 乾燥落屑性変化も消失するこ とから 、 角質細胞 間に存在するセラミ ドが角層の水分保持機能 に深く関わっ ているこ とが明らか となっ ています 。 セラミ ドは角質細胞間で親油基および親水基 を隣同士に並び他の細胞間脂質も巻き込んで 図2のように 脂 質 2 重層を 形 成しています。 この脂質二重層を形成する為には親水基と水 素結合をする形で水分子が結合する必要があ り 、 この水分子がセラミ ドの親水基とと もに親 水層を形成し、 先ほどの四酸化ルテニュ ウ ム法 での電子顕微鏡観察での電子濃染層を形成 しています。 この水分子の存在と量は示差熱分 析により測定が可能で、 角層をアセ トン/エーテ ルで処理し、角層か ら セラ ミ ドを抽出することに より示差熱分析曲線が 変 化し、無処理では 約30%存 在した不凍水 〈結合水〉 が1 5%まで に減少 し ます 。 正常の角層の全水分量は約30% であるので、 角層に正常で存在する水はすべて 結合水であり、 したがってこのセラミ ドが脂質 二重層を形成する際に必要な結合水が角層の 水分保持機能を担っ ていると考え ら れています。 角 層 バリアー機 能  角層はエパポリ メータ ーなどで評価できる水 分蒸散 (不感 蒸せつ) に対するバリアー機能を 有することが 知られています。 すなわち皮膚角 層をスコッチテープで剥離することにより 、剥 離回数に比例して皮膚内部からの経表皮水分 蒸散 t ransepidermal water loss (TEW L) が増加し、角層全体が省かれたところでその 増加は飽和に達することより、角層全 体と して バリアー機能を持っている と考えられています。 この水分蒸散に対するバリアー機能は経皮吸 収バリ アー と相関 していることも知られ ています 。 このバリ アー機能は角層の厚さより もむ しろ角層 内に存在する角質細胞間脂質の量と良い相関 をもっ ており 、 なかでもセラミ ド量と水分蒸散量 はよい相関を示すことな どから、 角質細胞間に 存在するセラ ミ ドを主体とした脂質の脂質二重 層によっ てバリ アー機能が営まれている と考え られます。 角層バリアー機能とセラミ ドの関係を解析する

モデルと して、 必須脂肪酸欠乏 essential fat ty acid def ic iency (EFAD) 動物の角層バリアー 機能障害があげら れます 。EFA D 動物の角層内 のセラミ ドは量的にはほとんど異常が無いにも かかわらず、 バリアー機能が著し く減少し ており、 セラミ ド組成の詳細な解析よりO-アシルセラ ミ ドのアシル部位における リ ノ ール酸エステルが ほとんどオレイン酸エステルに変化しているこ とが発見されま した。 このアシル部位における リ ノール酸か らオレイ ン酸への変化は必須脂肪 酸を欠如した 餌により随時生じるが、 その脂肪 酸組成の変化と対応し て水分蒸散量で示され る角層バリアー機能も減少し、 またリ ノ ール酸を エステル基にもつ合成アシルセラ ミ ドの皮膚塗 布によりEFA D 動物のバリアー機能がほぼ完 全に回復するこ とから、 セラミドのなかでもリノ ール酸エステルを有するアシルセラミ ドがバリ アー 機 能 に 重 要な 役 割をになっているもの と考えられています。

セラミド の 由 来

 セラミ ドを主成分として含む角質細胞間脂 質の細胞生物学的起源は表皮の有棘細胞内 で形成される層板顆粒で、層板顆粒は Golgi 装置の膿胞より分泌されます 。細胞内に分泌 された層板顆粒は顆粒細胞が角質細胞に分 化する直前に細胞外に分泌され、種々のスフ ィ ンゴ脂質関連酵素の働きで修飾を受けた後角 質細胞間に再配列し角質細胞間脂質なり ます。 層板顆粒の成分及び存在酵素はすでにその生 化学的分離によ り明ら かになっ ており 、 Freinkel らによれば、主成分はグルコシ ルセラミ ド、 ホス フォグリセリ ドとスフ ィ ンゴミエリンで、存在酵 素と しては酸 性フォスファターゼ、 グルコシダー ゼ、 スフィ ンゴミエリナーゼなどの活性が証明 されています。 これらの酵素は層板顆粒の成分 を最終的に角質細胞間脂質成分に変換す るの に働いており 、 事実角質細胞間脂質中にはグ ル コシルセラミ ドやスフィ ンゴミエリンはすでに 完全に加水分解を受けまったく存在しません。

セラミド の 生 成 プ ロ セ ス

セラミド の角層における微細構造

 通常の電子顕微鏡の固定法 (グ ルタルア ルデ ハイ ドーオスミ ン酸固定ーエタ ノル脱水) では、 脂質が溶出する傾向が強く 、 存在自体が不明 確であるが 、グルタルアルデハイ ド 液での固定 をアクロレイ ンベーパーによる蒸気固定に変え るこ とによ り角質細胞間脂質 〈セラミ ド〉 は明瞭 な電子濃染帯として観察が可能になります。 四酸化 ル テニュウム法では図2のようにヒ ト 前腕皮膚角層で多数のラメラ構造よりなるセ ラ ミ ドの層状構造が明瞭に観察できます。 すな わ ち、 セラ ミ ドは電子濃染層 と電子淡染層が交 互に配列 した層状構造を とり 、 電子濃染層はセ ラ ミ ドの極性部に電子淡染層はセラ ミ ドの親油 部にそれぞれ相当します。

 セラ ミ ドは表皮基底細胞内でセリンパルミ ト イル トランスフ ェラーゼによりアミノ酸のセリ ン にパルミチン酸が付加し て出来るケトスフ ィ ン ガニン ketosphinganineよ り種々酵素の働き で生成され、 顆粒細胞内の層板顆粒と して分 泌される までにスフ ィ ンゴミ エリンやグルコシル セラミ ドに変換されます。角質細胞間脂質と 成るまでには、この層板顆粒が顆粒細胞が角 質細胞になる直前に細胞外へ分泌され、 層板 顆粒中のスフ ィ ンゴミエリ ンやグルコシルセラミ ドが同様に層板顆粒中に存在したス フ ィ ンゴミ エリナーゼやベーターグルコセラブロシダ ーゼに より、 フォスフォリルコリンやグルコースが加水 分解によりはずれてセラミ ドになります。 この様 に生成されたセラ ミ ドは同様に層板顆粒中に存 在したセラミ ダーゼにより角層中で加水分解を うけ、 スフ ィンゴシンとなり、その一生を終えま す。セラミ ドが生成される上述の2つの過程の 比率は、 ベーターグルコセラブロシダーゼの欠 損症である ゴーシ ュ病でも約3 0%のセラミ ドが 存在している事実から、 7 0%のセラミ ドはグル コシルセラミ ドから 、残りの3 0%のセラミ ドは スフィンゴミエリンからそれぞれベーターグル コセラブロシダーゼ及びスフィンゴミエリナー ゼ酵素による加水分解によると推察されてい ます。なおセラミ ド 種 のうちアシルセラミ ドは スフ ィ ンゴミエリ ンからは生成せず、 グルコシル セラミ ドから合成されることが明らかとなって います。

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サイエンスプラザ

図1 セラミド の種類と構造

角層モデル図

バリアー機能

水分保 持機 能

角質細胞膜 セラミド

角層細胞間脂質の 電子顕微鏡像

角質細胞膜

図2  角層内のセラミドの構造と機能 A:ヒ ト前腕皮膚角層の四酸化ルテニュウム法により染色した角層細胞間脂質の電子顕微鏡像. B: 角質細胞間におけるセラミドを主体とした角質細胞間脂質の脂質二重層構造モデル図

セラミドの異常が関与する皮膚病

老人性 乾 皮症  角層中のセラミ ド量は加齢と ともに減少す る こ とが知られており、 老人の脚に認められる乾 皮症は、 セラ ミ ドの減少にもとずく角層の乾燥 性の増加が原因となっています。以前に乾燥 化の原因と考え られていた加齢にともなう皮脂 分泌の低下は、皮脂の役割の中で角層水分保 持機能に寄与する割合が低いことなどから、 最近はあまり重要視されなく なってきています。 加齢にともなう角層中のセラミ ドの減少メカニ ズムと しては、 セラミ ド代謝酵素の中で 、 角層中 のセラ ミダーゼ活 性のみが加齢と ともに著し く 増加する こ とから、 セラ ミ ダーゼによる加水分解 により 、セラミ ドの減少が引き起こされている ことが推察されています。

アトピー性皮膚炎 ア トピー性皮膚炎患者皮膚の無疹部皮膚にお いても皮膚角層の水分保持機能やバリアー機 能が健常者にく らべ著しく低下していることが 知られており、 これがア トピー性皮膚炎の再発 難治化の原因の一つと してあげられています。 ア トピー性皮膚炎患者の皮診部及び無疹部角 層中のセラミ ド量は健常者に比べ顕著に減少 しているこ とが判明しており 、 セラミ ド種のなか でもバリアー機能に関連の深いアシルセラミ ド が最も減少しているこ とが、ア トピー性皮膚炎 患者皮膚での水分保持やバリアー機能の低下 の原因とされています。 ア トピー性皮膚炎での セラミ ドの減少のメカニズムとしては、 加齢に よるセラ ミダーゼ活性の亢進とは異なり、 また スフ ィ ンゴミ エ リナーゼやベーターグルコセラブ ロシダーゼ活 性も健常者と差がないなど、従

来のセラミド代 謝酵素活性レベルはなんら変 化していないのに対し、 スフィンゴミエ リ ンをデ アシレーションする未知の酵素であるスフィン ゴミエリンデアシラーゼ酵素活性の異常発現 が推察されています。 本酵素が発現する と、 ス フ ィ ンゴミエリナーゼと基質であるスフ ィ ンゴミ エリンが競 走することによりセラミドの替わり にスフ ィ ンゴシルフォスフォリルコリンを生成す ることで、 セラミ ドの減少が引き起こされます。 その他の病気  セラミ ド生成酵素であるスフィンゴミエリナ ーゼやベーターグルコセラブロシダーゼの欠 損症であるニーマンピック病やゴーシュ病は スフィ ンゴミエリ ンやグルコシルセラ ミ ドの蓄積 とともにセラミ ドの生成が減少することから、 皮膚のバリアー機能や水分保持機能が低下 していることが 知られています。

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